denkifishの雑記帳

ポスドク(神経生物学・動物行動学)のちょっと長めのつぶやき

Readcube papersを使って「文献管理」をする

研究というものを始めると、多かれ少なかれ先行研究というものを読まなくてはならない。最初の方は先生や先輩に論文を渡されることも多いだろう。慣れない英語がびっしりで、初学者にとっては片手間どころではないはずだ。そして「この論文も君の研究に関連してそうだ」と、面倒見の良い先輩がさらにおかわりをくれるかもしれない。このように、おすすめの論文については教えてもらえるかもしれないが、どうやって読むのか、読んだ論文をどうするのか、について教えてもらえる機会はあまり多くないのではないだろうか?

文献管理とは何か?

読んだ論文をそのままにしておいては、次第に内容を忘れてしまうだろう。多くの研究者は、一度読んだ(ダウンロードした)論文を整理して、いつでもその情報を引き出せるようにしているはずだ。文献管理はその状態を作って維持する作業を指す(と筆者が勝手に定義した)。
文献管理において重要なことは、メモを残して、後で検索できるようにすることだと思う。これらをプリントした論文とメモ用のノートで全て行うのは膨大で大変だけど、「文献管理ソフト」を使えば、パソコン上で簡単にできるようになる。

Readcube papers

筆者がメインで使っている文献管理ソフトである。デスクトップアプリもあるのだが、とっても重かったため、筆者は全てブラウザ上で使っている。他の文献管理ソフトと同じように、pdfを直接アップロードしたり、Chromeの拡張機能を使ってワンクリックで論文を取り込んだりすることができる。読み込んだpdfは専用のビューアーで閲覧することができて、左のサムネールにreferenceを表示させたり、ページや目次を表示させることもできる。サプリのファイルも自動でダウンロードしてくれる。(してくれないときもあるが、そのときは手動で簡単にできる。)その論文を引用している論文もすぐに閲覧できる。

Readcube papersのビューアー
データは全てReadcube papersのクラウドに保存されていて、容量は無制限のようである。昔は無料でも制限付きで使えたのだが、今は全て有料となっている。学生なら月3ドル、アカデミアの研究者は月5ドル、それ以外は月10ドルとなっている。ちなみに筆者は無料版から使い始めてから有料版に移行していて、そのためか年間50ドルのまま据え置きになっている。今月で10年目の支払いを行うらしく、良い節目だと思ってこの記事を書いている。

メモを残す

他の文献管理ソフトも同様だろうが、Readcube papersは豊富なメモ機能がついている。HighlightやUnderline、Sticky noteはもちろん、Draw pathを使って自由に線を描くこともできる。iPadなどのタブレット端末を持っていれば、Draw pathで手書き感覚でメモを取ることもできるだろう。また、それぞれの装飾機能について多種の色分けもできる。
メモはとにかく気がついたところに書き込んでいけば良いと思う。使う色などのルールを作ると後で読み返すときに便利かもしれない。筆者の場合、紫マーカーには疑問点を、緑マーカーには英単語の意味を載せている。他にも黄色マーカーや赤の下線を使って、大事だと思う箇所をハイライトしている。Sticky noteとDraw pathを使って、図にツッコミを入れたりもしている。 ただし、あまり複雑なルールを作らないことも大事だと思っていて、複雑なルールのせいでメモを書き込むことが面倒になってしまっては本末転倒である。まずは黄色マーカーだけでハイライトしていくだけでも十分かもしれない。

色々なメモの残し方
論文ごとにメモを残すことはいくらでもできるけど、特定のテーマに沿ったいくつかの文献を跨いだまとめを書きたくなることもある。少なくとも、Readcube papersにそのような機能はないのだが、個々の論文のページに固定のURLが割り当てられている。筆者は別のノートアプリを使ってこのようなまとめを時々書いていたりするのだが、このURLのリンクを適宜貼っている。そうすると後でまとめを読み返すときに、自分がメモを残した論文にダイレクトに飛ぶことができる。

検索する

これまた他の文献管理ソフトと同様に、Readcube papersにもタグ付けやフォルダによる階層型管理ができる。だけど個人的にはほとんど使ってない。使い始めの頃は一生懸命タグを付けていたんだけど、タグが細かくなりすぎて、一個一個の論文に何を割り当てるかを考えるのが徐々に面倒くさくなってしまったのだ。フォルダ分けも同じ理由でほとんど使っていない。ただし、論文のreference listを作るときだけはそれ専用のフォルダを作って、wordのアドオンからアクセスしやすいようにしている。
探したい論文があるときは検索機能を使って見つけている。Readcube papersの検索機能はなかなか有能で、検索窓にキーワードを入力すると、要旨や本文、自分の書いたメモの内容まで含めて探してくれる。検索窓に特定の書式を入力すれば、著者や発行年、ジャーナル名を指定して検索もできる。例えば、2024年の論文を探したいときは「year:2024」を入れれば良い。1993年以前の論文を探したいときは「year:[* TO 1993]」を入れれば良い。(*はワイルド的な意味らしいので、位置をTOの後にすれば、「以後」になる。)筆者の経験上、読んだ論文はこれでほぼ絶対に見つかる。また、アプリに表示されるリストの情報にLast Readというのがあって、これを降順に設定しておけば最近読んだ論文が上に表示されるようになる。これも地味に便利。(比較的最近できるようになって感動した。)

「検索に引っかかるよ」を検索
コメントの中身もしっかり検索対象に入ってるようだ

終わりに

というわけで、ほんのざっくり自己流の文献管理について書いてみた。「読んだ論文をどうするのか」という導入から始めたけど、実はタイトルだけ見て気になった論文とか、他人から薦められた論文とかもどしどし入れている。その際も、少しだけ補足情報(「XXさんにもらった」とか)を入れておくと、後で取り出しやすくなるかもしれない。
文献管理はほとんどの人が自己流でやってるはずで、もっと楽で効率の良い方法もあるのだろうと思ってる。そういうtipsをもっと聞いてみたいといつも思ってる。
Readcube papersについて話したけど、きっと他のアプリでも同じようなことができるはずだ。筆者は惰性で使い続けて10年目に突入してしまったのだが、あまりに依存してしまっているせいで、Evernoteのようにいつかサービスが打ち切られたときどうしたら良いんだろうという不安はある。